聴竹居 かみ添による紙のしつらえ

2024年秋、京都市を拠点に国内外で活躍する唐紙師・嘉戸浩氏の展覧会を開催します。
 会場は、建築家・藤井厚二が第5回自邸として建てた「聴竹居」[*1](1928年・昭和3年竣工)です。藤井は教鞭を執った京都帝国大学で日本の気候風土と日本人の感性に調和した住宅の在り方を研究し、その成果を自著『THE JAPANESE DWELLINGHOUSE』[*2]にまとめ、その中で当時の最先端の日本の住宅として「聴竹居」を世界に向けて発信しています。
 藤井厚二は同著にて「和紙は気温と湿度の調節のために非常に効果的な手段である。壁紙や襖紙として好都合に用いることができるばかりか、光の拡散に関しても役に立つ。[中略]日本の住宅においても、住宅の計画で非常に重要な紙という要素がもし取り除かれたなら、魅力的な特徴が奪われることになる。」と「和紙」についての想いを記しています。
 自然素材から作られる唐紙を現代的に生かした嘉戸氏の作品は、同じく木、紙、土など自然の素材を生かして建てられ、竣工当初の美しい姿に甦った「聴竹居」の空間の中でいかなる存在感を見せてくれるのか。そうした期待をこめ、嘉戸氏が「唐紙作品=紙」を「聴竹居」のモダンな空間に設えることを意図して展覧会タイトルを “しつらえ” としました。
 当展では、「聴竹居」の空間に、嘉戸氏が “しつらえ” をテーマに自らの作品を制作し見立てて展示することで、建築と唐紙による造形が響き合う空間を表現するとともに、かつてこの場所で営まれた豊かな暮らしの気配を彷彿とさせることを企図しています。
 会期中には、トークイベントなどを含め、嘉戸氏が在館(土・日曜日のみ)し、より親密で横断的な体験を促します。これにより、地元の町民や建築界はもとより、工芸や美術、デザインなど、広くものづくりに携わる人々や、学生など若い世代にいたるまで、「聴竹居」と言う空間の中で日本の伝統的な “唐紙” のかけがえのない価値を再発見していただく端緒になることを願っています。

*1 重要文化財建造物。2018年の大阪北部地震と台風21号で大きな被害を受けた後に、災害復旧、保存修理、防災施設整備、外構庭園整備等の事業を進め、昨年春に竣工当時の姿に復原されました。
*2  明治書房、1930年・昭和5年発行

主催者

Chochikukyo Kanshitsu (2024, photo by Yukio Kimura)


日時
2024年9月28日[土]、29日[日]
① 10:30–11:45
② 13:00–14:15
③ 15:00–17:15(+トークイベント)
9月30日[月]–10月6日[日]
① 10:30–11:45
② 13:00–14:15
③ 14:30–15:45
④ 16:00–17:15
* 会期中の土・日曜日は作家が在館します。
会場 聴竹居(京都府乙訓郡大山崎町大山崎谷田31)
定員 各回15名(9月28、29日 ③のみ各20名)
観覧料 2,000円(9月28、29日 ③のみ3,000円)
予約方法 以下のサイトからご予約ください。

予約サイト(Peatix)

お問い合わせ 一般社団法人 聴竹居倶楽部 事務局
TEL:075-956-0030(* 平日:9:00–17:00)
主催・企画 一般社団法人 聴竹居倶楽部

関連企画 会期中に「かみ添」と縁のあるゲストを招いてトークイベントを行います。

9月28日[土]16:15–17:15

「美術と紙(仮)

登壇者:
橋本麻里(甘橘山美術館 開館準備室室長)
嘉戸 浩(かみ添)

9月29日[日]16:15–17:15

「建築と紙(仮)

登壇者:
榊田倫之(建築家、新素材研究所)
嘉戸 浩


嘉戸浩

Photo: Maya Matsuura

嘉戸 浩

かみ添

1975年京都市生まれ。2002年Academy of Art University(San Francisco)グラフィックデザイン科卒業。ニューヨークでデザイナーとして活動後、帰国。京都の老舗唐紙工房で修行、2009年独立、工房兼ショップ「かみ添」を京都の西陣にオープン。建築関連の仕事に、和光本店地階改修(2024年、新素材研究所)、立礼茶室「然美」(2022年、Taiga Takahashi)、Ace Hotel 京都(2020年、Commune Design)など。その他に杉本博司、鹿児島睦、坂本龍一、Arts & Sience、smbetsmbなどのアーティストやデザイナーに唐紙を提供。

聴竹居

Photo:Taizo Furukawa

聴竹居

藤井厚二が1920年から1928年にかけて、大山崎の天王山の麓の約12,000坪の土地他に4件の住宅を設計。自ら暮らして体感温度や湿度などを検証し、採光や通風を工夫して、自然ととも快適に暮らすことを追求した。その完成形と言われる聴竹居は、工学的理論に基づいて設計された木造モダニズム住宅の先駆的事例として,住宅史上,建築学上,高い価値が認められ、2017年、国の重要文化財に指定された。さらに同年、日本イコモス国内委員会により「伝統を生かし、近代の環境工学の思想を取り入れた傑作」として『日本の20世紀遺産20選』にも選ばれた。

藤井厚二

藤井厚二

建築家、建築学者

1888年広島県福山生まれ。1913年東京帝国大学建築学科卒業、1913–19年竹中工務店初の帝国大学卒業の社員として勤務、1920–38年京都帝国大学工学部で教鞭を執る(21年助教授、26年教授)。京都を中心に約50件の住宅を設計。主な作品に八木市造邸(大阪、1930年)、大覚寺心経殿(京都、1926年)、小川家北白川別邸(京都、1934年)、扇葉荘(京都、1937年)など。著書に『日本の住宅』(岩波書店、1928年)、『聴竹居図案集』(岩波書店、1929年)、『THE JAPANESE DWELLING-HOUSE』(明治書房、1930年)、『聴竹居作品集』(田中平安堂、1932年)、『床の間』(田中平安堂、1934年)など。

橋本麻里

橋本麻里

小田原文化財団
甘橘山美術館
開館準備室室長

金沢工業大学客員教授

新聞、雑誌等への寄稿のほか、美術番組での解説、展覧会キュレーション、コンサルティングなど活動は多岐にわたる。近著に『かざる日本』(岩波書店)、キュレーションに「KUMIHIMO | The Art of Japanese Silk Braiding by DOMYO」(2021–2023年、JAPAN HOUSE巡回)、「ひかりの底」(2023年、寺田倉庫BONDED GALLERY)、文化監修に「刀剣乱舞ONLINE」ほか。

榊田倫之

Photo: Mie Morimoto

榊田倫之
*「さかき」は木へんに「神」

建築家、新素材研究所

1976年滋賀県生まれ。2001年京都工芸繊維大学大学院建築学専攻博士前期課程修了後、株式会社日本設計入社。2003年榊田倫之建築設計事務所設立後、建築家岸和郎の東京オフィスを兼務する。2008年現代美術作家・杉本博司と新素材研究所を設立。現在、榊田倫之建築設計事務所主宰、京都芸術大学客員教授、宇都宮市公認大谷石大使。杉本博司のパートナー・アーキテクトとして数多くの設計を手がける。2019年、第28回BELCA賞など受賞多数。著書に『素材考―新素材研究所の試み』(平凡社、2023年)、杉本博司との共著に『Old Is New 新素材研究所の仕事』(日本語版:平凡社、英語版:Lars Müller Publishers、2021年)。